『楽園のカンヴァス』   原田マハ著

 

ジャングルの中に置かれた長椅子に横たわる裸婦。夜の砂漠に眠るジプシーの女とライオン。万国旗が飾られた船の前に立つ画家……色鮮やかで幻想的で独特の画風に誰もが釘づけになる。それがアンリ・ルソーの絵。東京の森美術館を立ち上げ、数々の美術展を成功させたキュレーターだったことで知られる原田マハさんの最新作『楽園のカンヴァス』はルソーに焦点を当てた美術ミステリーです。  

 本書のおもしろさは豊富な美術知識、ドロドロした絵画ビジネスの実態が寄木細工のようにぎっちりとはめ込まれた巧みな構成にあります。ルソーの人物像やピカソらとの交流を縦糸に、現代を生きる主人公たちの知識対決や絵画ビジネスに群がる人たちのえげつなさが横糸となって緻密で重厚な作品が織り上げられました。原田さんは私のインタビューで、「他の表現を乗り越えていく瞬間に画家たちは命を懸ける。私はその瞬間に読者を連れて行きたいと思いました」とおっしゃっておられ、「アートを愛することはこの世界を愛すること。だからアートを愛するなら、私たちが生きているこの世界を見つめ、感じて愛することが大切」と語っていて、その精神が本書の底辺に流れていることを強く感じます。

 絵画の知識も豊饒な世界観も楽しめる、一粒で何度でもおいしい作品。本好きにはぜひおすすめしたい一冊です。

子どもも若者も犬も、みんな毎日幸せに眠れますように
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楽しい経験と記憶をたくさん積もう!
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