講演情報を随時掲載いたします

 講演情報をこれまで掲載してこなかったのは、私の講演のほとんどが教育委員会や学校主催の対象者が限定されるものだからなのですが、HPを開いて以来「一般参加可能な講演はやっていないのか」とのお問い合わせを多くの皆様から頂戴いたしました。

 そこで、ご希望に応えるべく、一般参加可能な講演情報をアップしていくことにいたしました。ご参考になれば幸いです。

 

★「HPアップが遅い」とおしかりを受けております。なかなか更新できず申し訳ございません。

【以下、当日私が配布した資料とご紹介した書籍です】

                    

 

「読書のある、ぜいたくで幸せなライフスタイルとは?」

 

 

 

 長女たち 篠田節子/アニバーサリー 窪美澄

 

老いる親の呪縛から逃れられない長女たちの苦悩と葛藤を描く3編。親の言うことが頭ではわかっても、気持ちの上では納得がいない、許せない等折り合いがうまくつけられず  深い葛藤を抱く主人公たちに共感する人は少なくないはず。私は、長女は頼るための存在で、他のきょうだいはいつくしむための存在、という一文に胸を衝かれた。中編集だが、どの作品も濃厚で読み応えがある。母娘関係をよく描く窪美澄さんの作品「アニバーサリー」と合わせて読むと、現実の厳しさに対する救いや問題解決法は実は読書のなかにあることを強く実感できると思う。

 

 最初の質問(絵本) 長田弘/いせひでこ

 

長田さんの詩に伊勢さんが絵を描いたという絵本。

 

いせさんは、長田さんの詩をいったん引き受けて解釈してから絵を起こしているため、ただ詩を味わうだけではわからない、濃厚な世界が広がっている。何度読んでも、その都度新たな発見のある奥の深い一冊。

いつ読んでも、いくつの人が読んでも味わえる点もすばらしい。プレゼントにもどうぞ。

 

 ことり 小川洋子

 

12年ぶりの書き下ろし小説。ポーポー語しか話せない兄とその兄のたった一人の理解者である弟。ふたりは小鳥たちの声に耳を傾けながら、小さな幸せを大事にして静かに、丁寧に日々を生きていく。やがて兄は亡くなり、時間の経過とともに弟の人生のまわりには寂しさと切なさが増えていくが、それでも粛々と生き続ける。静謐だけれど、不思議な力強さのある小説らしい小説。読後の余韻が大変すばらしい。 

 

 脳のなかの幽霊/脳のなかの幽霊ふたたび/脳のなかの天使  V.S.ラマチャンドラン

著者はカリフォルニア大学脳認知センターの教授で、視覚や幻肢の研究で世界的に知られる認知神経科学者。それまで一向に治療方法のなかった幻肢痛(事故などで切断した手足が痛むと感じること)や相貌失認など脳にまつわる特徴的な事例を豊富に紹介しながら脳の構造や不思議に迫る名著。オリヴァー・サックス(「妻を帽子とまちがえた男」など)は医者としての愛溢れるエッセイを書き、それらと似ているように思うかもしれないが脳科学の見地から、人間について深く洞察していく著者は科学者であり哲学者でもあるのだ。とにかく何度読み直しても面白すぎる。

 

 予告された殺人の記録 ガルシア・マルケス

 

マルケスといえば「百年の孤独」や「族長の秋」が圧倒的におもしろいが初めての人には中編の本書のほうが入りやすいかもしれない。実際に起こった事件をもとに、保守的な共同体のなかに外から人が入ってきたときに起こる違和感やズレ、攻撃性を掬い上げながら、人間の本質を浮かび上がらせる。重層的な構成が素晴らしく、圧倒的な力を持つ作品。

 

番外編

 

福音館の「海中記」「食べもの記」「地球人記」「植物記」などのシリーズ

子供向けではあるけれど、大変秀逸。美しい写真と分かりやすい解説に満足度が高い一冊。疲れたときに眺めているだけで気分転換になる。

 

・自警録 新渡戸稲造

言わずと知れた名著。新渡戸稲造については「武士道」のほうが知られているが、英語で書かれた武士道よりもこちらのほうが彼の真骨頂のような気がしている。人生の妙味はどこにあるのか、生きていくうえで人として心がけるべきこと何かなど、生きる指針になった一冊。

 

冗談 / 生は彼方に / 不滅 / 存在の耐えられない軽さ  ミラン・クンデラ

 

チェコの作家で、共産党に入党し後に除名され、プラハの春のときに指導的な存在だったことで知られるが、「冗談」は最初の長編小説。練り上げられた文体、体制批判のように見えて、実は究極的に人間の本質や運命の意味を問うテーマなどが集約された作品。本人も「これは恋愛小説だ」と語っている。個人にはなんともしがたい歴史という大きな時間の流れの中で起こることに対して、人はいかにその流れに飲み込まれず、潰されずに生き抜けるのか。そこにあるのは「愛」ではないか、と問うていると思う。生きること自体、偶然性と蓋然性に左右される。「なぜこんなことに?」と天を呪いたくなるようなことが起こったりするとき、クンデラの作品には生への可能性への示唆があるような気がしている。私自身がそういうことに直面した時、再読し、胸を衝かれた。

 

・適応上手 / ぼくが医者をやめた理由 / 病者は語れずー東海大「安楽死」殺人事件   永井明

 

私の師匠でもある永井明氏の集大成的エッセイ。内科医でストレスの研究者であった彼が医者を辞め、作家になり、人生の意味を問い続ける。医療とは何か、それ以前に人が生きていくとはどういうことなのか。最後の瞬間まで、波間を漂うにように軽やかに優雅に見せつつ、しっかりと大地にへばりついてもがき続けて生き抜いた氏の真髄が行間から滲み出ている一冊。

 

Sabine’s  Notebook    Bantock    Chronicle Books

 

20年ほどまえにNYの書店で見つけた絵本。主人公のグリフィンが孤独を癒すために作り出した架空の恋人サビーン宛の手紙のやりとりを絵本にした一冊。架空の人物であるはずのサビーンが実体を伴うと言い出して、グリフィンは混乱するが・・・。絵本だが、なんとも哲学的でありミステリー調でもあり、装丁も美しく文句のない作品で、これを手にするたびにうっとりする。

●ほかに対談のなかで紹介したのは道尾秀介『貘の檻』、白石一文『彼が通る不思議なコースを私も』、松田青子など

 

 

 

読書あるライフスタイルのキーワード

 

・過去の膨大な知識と知恵と情報の集積

 

・想像性の鍛錬

 

・自由に社会を生き抜くための土台作り

 

講演後にいただきましたよくあるご質問

Q

中学校で、周りが気が付かないところで、リスクファクターを上げるボス的存在(社会的存在)への処遇(戦術)?

 

A1

ボス的存在が社会的存在ということの意味がよく分からないのですが……。もし、このボス的存在が中学生ではなく先輩や地域の大人の場合に関しては、理論上はその存在との付き合いを制限するべきなのです、それは可能でしょうか。その場合は、教師ではなく親が介入してください。もし、ボス的な存在が中学生なら、ボス支配には組織で対応するのが基本となります。そのボスが暴力支配をしている場合は、その暴力に対して組織をあげて公的に介入する方向に持っていくのがいいかもしれません。まして、14歳以上であれば、刑事責任年齢であるということも、全体の前でしっかり説明しておく必要もあると思います。いずれにしても組織で行うべきですし、暴力支配になっている場合は公権力の介入も辞さずという姿勢を明らかにしておくことが大事になります。

 

Q2

リスク要因を減らし、保護要因を増やしていくような生徒指導でよい事例があったら教えてほしい。

 

A2

残念ながら「リスク要因」を下げ「保護要因」を上げるというターゲットを持って生徒指導をしている学校を私はまだ取材したことがありません。学校が崩壊状態にあったところ、組織経営を見直し、ターゲットを明確にして生徒指導も授業改善も行った結果回復したという学校を取材することがよくありますが、私の視点から見ると、リスク要因が下がり保護要因が強化されたから回復できたのだなと説明がつきます。ただ、これまで「リスク要因」「保護要因」を知ったうえで、そこにターゲットをおいて戦略・戦術を踏まえて論理的に取り組んだ、という事例には出会ったことがありません。逆に、荒れている学校から相談を頂き、こういったことをお伝えして、現在立て直している最中だという学校はいくつもあります。

 

 

Q

非社会性が自分の個性と理解し、正当化を主張して譲らないケースの対応法を具体的に教えてほしい。

 

A3 

「非社会性を個性」と理解し正当化を主張されておられるということですが、この場合、本人が自身の思考のバイアスに気づく必要があります。思考のバイアスがあると、自分を特別視したり、推論の仕方に独特の偏りが認められたりします。こういう傾向があると、おそらく「非社会性を個性と捉える」だけではなく、他の場面でも思考のバイアスから来る言動があるのではないかと思われますが、いかがでしょうか? まずはそういった言動を、その瞬間瞬間に指摘し修正を重ねていくことで本人にとって社会適応できるような思考の在り方を指導し、本人の自己理解や気づきを上げていくことが大事かもしれません。

 

 

Q

私は学校現場に務めていますが、子供のニーズを把握するために脳科学の専門家におねがいするとき、どのような方法があるか教えて下さい。またコストはどのくらいですか。とても参考になる講話でした。

 

A

学校における子どものニーズについて把握することのできる脳科学の専門家が日本にいるかどうか私にはわかりません。個々の子どもの教育的にーズについては心理検査が多数出版されています。学校でお持ちのところも多々ありますし、教育センターや発達障害支援センター等にはあるはずですのでそちらにお問い合わせください。

 

 

Q5

脳だから「かそ性」がある、「かそ性」というのはどういう意味なのでしょうか?

 

A5

「可塑性」と書きます。知恵蔵2013によると「神経系は外界刺激などによって常に機能的、構造的な変化を起こしており、この性質を一般に“可塑"と呼んでいる。神経の可塑性は大きく3つに分けられる。1つ目は脳が発生していく時や発達していく段階にみられる可塑性。2つ目は老化障害を受けた時などに神経の機能単位消失するが、それが補填回復されていく場合3つ目は記憶学習などの高次の神経機能が営まれるための基盤となっているシナプスの可塑性(synaptic plasticity)である。特に神経科学にとっては3つ目が重要で、その機構についても徐々明らかにされている。記憶には、短期記憶と長期記憶があるが、短期記憶は主にシナプスでの伝達効率の変化により、長期記憶はシナプス結合の数や形態の変化により達せられると考えられる( 今西二郎京都府立医科大学大学院教授 )」です。講演でお話したの、ここでいう「2つ目」の役割です。

 

 

Q6

今月4歳になる子供の母です。来年幼稚園にかよわせようと思いますが、子供の発達障がいに対して、理解のある幼稚園、小学校、中学校…少ないことに不安を感じています。ある小学校では、校長先生が「こういうお子さんがある程度集まらないと受け入れられない」と言ったりなど、対応に不安を感じる学校が多数あります。親が行動しても受け入れ側が、逃げていては何も変わらない。どうすれば学校は対応してくれるか、今日来ていただいている先生方にも考えてほしい。私にできること、やらなければいけないこと、学校をふりむかせるには、どうすればいいか、教えていただければありがたいのですが。

 

A6

発達課題のあるお子さんを育てていくときに、大事なことは大人も一緒に成長していくことではないかと私は常々考えております。つまり、保護者も学校の先生もその子のかかわりを通して、一緒に成長していくことが子どもの最大のメリットになっていくのです。従って、「●●してくれない」「不安だ」という思いがおありだというのはよくわかりますが、かといって全面にそれを押し出して対立関係に持ち込んでしまうと子どもがそれを誤学習してしまう可能性も否定できません。今できることは、家庭と地域と何より本人の保護要因を少しでも上げること、それから一緒にがんばっていける仲間を探すことではないかと思われますが、いかがでしょうか?

 

人生を楽しみましょう@鈴鹿サーキット
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子どもも若者も犬も、みんな毎日幸せに眠れますように
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楽しい経験と記憶をたくさん積もう!
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